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本文抜粋50頁から60頁

延生命。追求奉仕,争朝夕。

雨斜斜。七色変化,紫陽花。  千葉 橋香雪

 

 

 

第五章  観楓

 

 

☆この章で課題して、八章で課題を解きます。

 続いて「観楓」を作ってみる。「だれ漢」の88nより、眼に留まった言葉を拾いだして貰った。

 

 

起句▲●  △○● 承句△○ ▲●☆   一路 題紅葉   千林 詩句中

霜葉 鐘声遠 不妨 曲逕通

葉葉 秋深浅   紅飛 一陣風

求句 偏添色   山腰 一路通

一酔 羊腸路   題詩 錦繍叢

  石徑 無人掃   壮観 萬樹紅

遠近 斜陽影   仙境 塔影紅

  楓渓 楓林晩   紅粧 句易工

韻字は東

 

  曄歌五首

一陣風。霜葉不妨、萬樹紅。

錦繍叢。楓渓題詩、句易工。

塔影紅。葉葉千林、一路通。

斜陽影。遠近紅粧、鐘声遠。

秋深浅。山腰石徑、無人掃。

月季花。月月鬥艶,吐芳華。  河南省 陳義侶

月晶瑩。不分貧賤,作虚盈。

笑書痴。窮読歴史,鬢如絲。

 

 

 

転句△○ ○●● 合句▲● ●○☆     斜陽 三十里   四面 画図中

  深秋 多酔態   何処 訪禅宮

  楓渓 紅葉散   白髪 興無窮

  欺人 霜染葉   石磴 伴樵翁

  雲流 衣欲染   勝景 勝花紅

  全山 閑半日   散乱 晩鐘通

  前峯 真似画   奪目 盡霜楓

  浮生 紅葉寺   宜酔 錦繍中

 

? 前章に倣って、作詩練習をして下さい。作例を見て仕舞 ったり読むだけでは、勉強には成らない

? △○や▲●は孤平や孤仄に係わり有る処だから要注意。

 

 

 

第六章 第四章梅雨家居の作詩練習

 

 扨て此処で前例に倣って、二文字の言葉と三文字の言葉と、組み合わせの良さそうな言葉どうしを組み合わせて、五文字の句を作りました。どうもしっくりしませんが、練習だから御勘弁願うとして、人に依って其の組み合わせは色々有りますが、ここに一例を示す。

 

 

起句▲●  △○● 承句△○  ▲●☆

未霽  聞檐滴 濛濛 十日霖

細雨  書窓下 庭中  夏未深

  竹徑  濛濛雨   通宵  烟雨深

  連日 柴扉下   閑人  又自斟

  半夜  無人訪   吟衣  又苦吟

  五月  分袂雨   愁人  寂莫心

  雨細 池萍動   芭蕉 日長陰

日暮  風鈴黙 幽荘  竹作林

 

  曄歌四首

無人訪。破屋吟衣、聞檐滴。

風鈴黙。細雨濛濛、池萍動。

書窓下。五月芭蕉、分袂雨。

十日霖。日暮愁人、又苦吟。

 

 

 

転句△○  ○●●は●○● 合句▲●  ●○☆

天昏  人亦懶 日午  只孤斟

雲迷  書帙湿   未霽  欝陶心

  疎籬  新竹緑   酌酒  又閑吟

  書窓 人不到   雨気  湿衣襟

  三更  空對酒   五月  又梅霖

  青苔  埋竹徑 小院  有幽琴

  池亭  苔砌緑 村巷  緑陰深

  破窓  蝸試篆

 

? 蝸試篆;蝸牛の通った跡がウネウネと篆書の様だ。

? 同一意義の重用は原則として禁止されています。

 

 最低限文法には注意して、自分よがりは禁物である。元来文章という物は「読ませる」のではなく、「読まれる」ものですから、他人にどの様に読まれるかを基準に考えなければ成らない。

 皆の共通した理解に基づく文章法、これが即ち文法で、文法に則らなければ、意志の伝達は出来ない。

 かと言って、現在では余り難しい語法は読まれないから、此の点に留意した方が良い。

此処で起承轉合、各八句づつ出来たので、更に出句と落句の組み合わせを捜すと、次の様になった。

 

 

起句▲● △○●

未霽 聞檐滴 未だ霽れないで雨垂れを聞く

雨細 書窓下 霧雨降る窓の下

 

 

承句△○ ▲●☆

濛濛 十日霖 しとしと降り続く十日の雨

  庭中 夏未深 庭はまだ夏の盛りではない

 

 

転句△○ ○●●亦は●○●

天昏 人亦懶 お天気がはっきりせず気持ちもものうい

雲迷 書帙湿 お天気がぐずつき模様で、ノートも湿る

 

 

合句▲● ●○☆

日午 只孤斟 昼間から独りで酒を飲む

  未霽 欝陶心 未だモヤモヤが晴れぬ

 

 十六句の中、出句と落句の組み合わせの出来たのは、この四組だけで、後はどうも拙い。

 この四通りの組み合わせは、十六通り有りますが、比較的良さそうと選び出されたのは、

 

未霽聞檐適,濛濛十日霖。雲迷書帙湿,未霽欝陶心。

細雨書窓下,庭中夏未深。天昏人亦懶,日午只孤斟。

 

? 活字にするには恥ずかしい限りだが、却って気兼ねなく 筆を入れられるから、これも此処もと真っ赤にして欲しい。

? 唯文字を並べただけです。

? 庭中夏;在庭中的夏季

【修正例】起句の未霽聞檐適,と合句の未霽欝陶心。の未霽が同じに成ってしまった。依って起句を「獨坐」に入れ替えれば、弊は解消される。

 

主 述 目的語 連詞 主 述 目的語

我 獨坐書房里 於是 我 聞 檐滴的音

我は独りで書斎に居て、そして我は檐滴を聞き、(二つの要件)

 

主 場所  述 目的 主語  述語

我 書房里 聞 檐滴 庭中夏 未深

我は破屋在って、そして我は檐滴を聞き、(二つの要件)

庭中の夏は未だ深くありません。 (一つの要件)

 

主 述 主語 述 連詞 主 述語 目的語

雲 迷 書帙 湿 而 我 未霽 欝陶心

雲は迷って、そして、書帙は湿り (二つの要件)

私は未だ鬱陶の心が晴れない (一つの要件)

 

 

  梅雨家居

 

獨坐聞檐滴,庭中夏未深。

雲迷書帙湿,未霽欝陶心。

 

 

 

第七章  五言絶句の検討

 

 扨てこれまでに、幾つかの詩題に就いて作詩練習をして、多少のこじつけ乍、何首か完成させた。だがこれで、漢詩が出来た!出来た!と喜ぶには未だ早い。

 巻頭に述べた通り、詩は「作者の持論を訴える」事が主旨だが、今迄の作詩練習では、此の最も重要な箇所に注意を払って居ない。単に言葉を繋ぎ合わせただけで、又作詩には其れなりの技巧も有るのだが、これも用いていない。

 「作者の持論を訴える」には先ず作者が物事に感動しなければどうにも成らない。

 これには読者諸君が、多くの作品に接し自己の感性を磨く以外に道はない。自己の感性に基づかない詩は、唯の文字並べの遊戯の域を出る事は出来ない。

 時に非常に心を打つ体験をした時、普段とは違った、想いも依らぬ作品が出来る事が有る。

 これが作者の持論を訴える詩で有る証拠で、自己の感性を磨けば、普段の何事もない事にも、心ときめかす事が出来、何と刺激の多い世界である事か、人生何倍にも膨らんで感じられる。

 亦詩とは、誰しも心の中では何とはなしに思っては居るが、口に出して適切に表現できないそんな持論を、快い文章で人前に引き出して見せる。読者をして自分の思いを、代弁してくれる流麗な言葉とも言える。

 作者の感動を訴えるにも、それなりの技巧は必要で、絶句には「起承転合」が有って云々と言われる。そんなに簡単な事柄ではないが、然し此処でこれを論じるのはページの都合から出来ないので、頼山陽が示したと言われる・・・

浪花本町糸屋の娘  … … … … 起句 出句

姉は十八妹は十五  … … … … 承句 落句

諸国大名は弓矢で殺し… … … … 転句 出句

娘二人は目で殺す  … … … … 合句 落句

 起承転合の配置に拘泥し過ぎて、起承転合バラバラの作品にお目に懸かるが、出句と落句で一意一章を構成するように注意を払わねばならない。

 勿論出句と落句で一意として読む事は当然で、よく詩吟などで間違って読まれる例として、頼山陽の詩「題不識庵撃機山図」の転合「遺恨十年磨一剣、流星光底逸長蛇。」の遺恨と言う文字は、十年磨一剣、流星光底逸長蛇 十年間も機会を窺っていたのに「逸長蛇」逃げられて仕舞った!その事が悔しいと言っているので、転合別々に読んだのでは本来の意味とは成らない。

 

? この様な詩法を「管到」と言う。

? 起承轉合の配置は、この順序とは限らない。ただ起承  轉合の順序にすれば、大過ない作品が創れると言う、一つ の詩法に他ならない。

? 漢詩や漢文には對仗は付き物で、これを用いると一歩評 価を上げる事が出来、殊に五言絶句の場合、平仄の配置が 対仗と同様でだから、例え使用を間違えても、規約上の間 違いに成る事はないので、初心者でも手軽に挑戦できる。

  一般に対仗にするのは、起句と承句で有って、これを前 対の句と言う、更に類例を見ると、起承互いに言葉の働き が同じ事に気付く事と思う。

? 對句とは有る対象句に対して、こちら側の対応を言うの で、出句に対して落句を對句にする事を言うのである。依 って出句は對句とは言はない。落句を對句にした場合の、 出句と落句の関係は對仗と言う。

 

色相 名  事柄

起句 白髪 残生 楽   年寄りの事

承句 紅顔 行路 難   若者の事

 

数詞 色名 名

起句 千里 青山 路 青い山の路

承句 数行 緑水 塘 緑の水の塘

 

重字 程度 事柄

起句 處處 頗多 愛 頗る多くの愛

承句 年々 殊少 歓 たいした歓びもありません

【注意】“愛”とは継続して止まないと言う条件がある。継続しない場合は日本語で言うところの“好き”と言うことである。漢語では“喜好”と言う。好きな女の子と、愛している女の子とは、根本が違う。

? 対句は対象句に対して、文法構造が同じ。文法構造が同 じ上に、更に、数詞には数詞。色相には色相。干支には干 支。方角には方角。季節には季節、等を対応させれば、殆 ど間違いはない。

 

 前記対句に就いて少し考察して見ると、

起句  ▲ ●  △ ○ ●

承句  △ ○  ▲ ● ☆  の配置になっていて、

これを見ると平仄の配置が丁度逆で、更に

上二字 ▲ ●

△ ○ が「対」を為すという事と、

下三字 △ ○ ●

▲ ● ☆ が「対」を為すと言う条件を満足して、初めて對仗が成立する。

 そして対とは、互いに文法の上からも同じ構成で成り立って居る句と言えるが、一句五字「二+三」だけで対を為す句中対も有る。

 

? 漢詩には題名が付いている。題名を後から付けるなら簡 単だが、題名が先の場合は時々シックリいかない作品があ って、笑えない話。要注意。

? 一般には、四句で題名と等しい内容なら良いが、詠物の 場合は各句毎に題意から離れてはならない。

? 吟社で一般に行われる課題を示そう。

 元旦賽神 雪中家居 春風郊野 杪春憐花 麦秋郊村 梅 雨家居 海村納涼 月下閑吟 新秋登山 秋郊散策 新霜 踏歩 寒夜耽吟 等がある。

  この方法は批正者の便宜のためで、作品創作としては、 宜しい方法ではない。全員に同じ題を与えると、批正が効 率的に出来る。10首も100首も同じ労力で批正が出来る。

? 題を付ける便宜的な方法として、論語の表題と同じに、 句の一部を抜き取って付ける方法がある。

 

 

  祝叙勲 松戸 山内雅道 録蒼浪集

鶴髪古希宴,已知天下名。  

叙勲芳晩節,尚在壮心宏。

  評曰、短句能成祝詞其情可想

 祝いの詩は良く作られるが、目出たい言葉の羅列で内容に乏しい作品が多い。作者の想いを如何に上手に表現するかが要点。

 

 

  山居隠棲 松戸 河上庄山 録蒼浪集

窓前春尚浅,地僻野無人。

莫笑山棲楽,朝朝暮暮新。

  評曰、短詩脱俗之情盈盈

 

 起承に於いて先ず作者の位地を固定し、即ち其の表現法は「景・実」転合で作者の心情を述べる糸口を与えます。その表現法は「情虚」。そして「朝朝暮暮新」の言葉は、読者をして色々な想いを想起させます。

 

 

 

第八章 第五章観楓の作詩練習

 

 扨て此処で前例に倣って、二文字の言葉と三文字の言葉と、組み合わせの良さそうな言葉どうしを組み合わせて、五文字の句を作った。

 どうもしっくり行かないが、練習だから御勘弁願うとして、人に依って其の組み合わせは色々有るが、ここに一例を示す。

 

 

起句▲● △○●  承句△○ ▲●☆ 東韻

一路 羊腸路 千林 錦繍叢 

  霜葉 無人掃 不妨 萬樹紅

  葉葉 斜陽影   紅飛 古梵宮

  求句 楓林晩   山腰 一路通

  一酔 題紅葉   題詩 句易工

  石徑 鐘声遠   壮観 詩句中

  遠近 秋深浅 仙郷 曲徑通

 

 

転句△○ ○●●亦は●○● 合句▲● ●○☆

深秋 閑半日 何処 晩鐘通

  楓渓 真似画   林徑 盡霜楓

  雲流 紅葉散   石磴 錦繍中

  全山 霜染葉   勝景 図画中

  前峰 三十里 白髪 訪禅宮

浮生 多酔態   奪目 興無窮

  斜陽 衣欲染   宜酔 伴樵翁

四面 勝花紅

? 夕陽が作者の衣を照らし、紅葉の錦と競合して、更に美 しさを増す様子。

? 主語+述+目的

  紅葉+勝+花紅

 

 起承転合、各八句づつ出来たので、更に出句と落句の組み合わせを捜すと、次の様に成った。

 

 

起句▲● △○●

  一路 羊腸路 曲がりくねった路

霜葉 無人掃 落ち葉を掃かない

葉葉 斜陽影 葉に夕陽が映る

求句 楓林晩 句を求める紅葉の林

 

 

承句△○ ▲●☆

山腰 一路通 山裾の路

  不妨 萬樹紅 どの樹も紅葉だ

千林 錦繍叢 林一面錦のようです

  紅飛 古梵宮 古い寺に紅葉が舞う

 

 

転句△○ ○●●亦は●○●

雲流 紅葉散 雲は流れて紅葉は散る

斜陽 衣欲染 夕陽が衣を染める

  楓渓 真似画 紅葉谷は絵のようだ

  探秋 閑半日 秋を楽しむ静かな半日

 

 

合句▲● ●○☆

石磴 錦繍中 石段は紅葉の中

四面 勝花紅 辺り一面花よりも綺麗だ

  林徑 盡霜楓 林の路は霜楓尽きる

  何処 晩鐘通 何処からか鐘の音が

 

 此の八通りの組み合わせを更に組み合わせ、比較的良さそうと選び出されたのは、

 

一路羊腸路,千林錦繍叢。斜陽衣欲染,四面勝花紅。

霜葉無人掃,不妨萬樹紅。探秋閑半日,何処晩鐘通。

葉葉斜陽影,紅飛古梵宮。楓渓真似画,林徑盡霜楓。

求句楓林晩,山腰一路通。雲流紅葉散,石磴錦繍中。

 

? 組み合わせは出来たが、これでは未だ人様に披露するに は心苦しい。これも練習の途中だからご勘弁願う。

? 疑問を持つ事は、何倍もの勉強になります。

? 同一意義の重用は原則として禁止されている。此の間違 いを犯す事は、上手下手以前の気の入れ方の問題です。た だ、詩法として、承知の上なら、差し支えない。

? 漢文は「漢語である」から漢語の文法に叶っていなけれ ば、最早言葉としては論外。

? 佳作ばかり読む事が勉強とは限りません。例題の様な作 品を真っ赤にするのも作詩の勉強には必要である。

 先ず平仄図に合致しているか?規則破りは無いか?文法 に叶っているか?日本製漢語(和語)の用い方に配慮して 居るか?句意の配置はどか?作者の意図が織り込まれてい る?あからさまでは無いか??等等。

? 此の作品も例に倣って、何を言っているか解ったようで 解らない!未だ文字並べの域を出て居ない。

  此の作例を見て、巧い!と思ったら、貴方の作詩能力は ゼロです。

? 作詩には最低限与えられた課題に対して、意見意図を持 たなければなりません。他人が理解して呉れる内容で無け れば、作品とは言えません。

? 漢詩を始めてから、随分と漢和辞典を引くようになった 事と思う。せっかく引いたのだからその侭にしないで、五 十音に見出しを付けたノートを用意し、文字と平仄の別、 簡単な意味と辞典のnを書き留めておくと、自分独自の 「平仄辞典」が出来ます。

 

 

 

第九章 「だれ漢」に依る作詩練習

 

 もうそろそろ注文した「だれにもできる漢詩の作り方」が手元に届く事と思う。此の本は詩に使う言葉の宝庫だから、大いに利用して沢山作って欲しい。

 作詩上達の鉄則は、多読多作多推敲の一語に尽きる!とは、何処にも書いてある。

 その前に、ご自分の物事に対する信念を、確かなものにすること。持論を顕在化させることが必要である。ご自分の信念!即ち持論が顕在でなければ、物事に対して訴えよう!と言う気持ちは起きない。

 何も訴えたい事柄(告訴意図)がないのに、訴える文字は綴れない。相手が好きでもないのに、相手の心を打つラブレターは書けないのと、同じである。

 

 先ずは内容の有無に拘わらず、此の詩語表を使って多作を志そう。漢詩に係わり有る事柄は、前の部分に説明が付いていて、自作の実務としては、これだけ知って居れば充分に間に合う。

 

? だれ漢は古典韵で編纂されているので、本書では総て 古典韵に依って解説する。

? 詩語の隣に小さな○印又は●印が所々に有るが、これは 此の文字だけは平又は仄で有ると言う印で、前記の五言絶 句平仄配置津図の△▲に当たる処だから、前後を考慮しな がら用いなければならない。

 

曄歌坤歌偲歌瀛歌三連五七律自由漢詩笠翁対韻羊角対漢歌漢俳填詞詩余元曲散曲楹聯はこの講座に記載があります