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本文抜粋50頁から60頁

  晩秋 逍雀

  其一

新酒青山痩,秋老昼掩門。

開窗残柿在,回首旧題存。

 

  其二

秋深門巷早寒生,茅屋荒籬葉葉声。

有酒無詩残菊在,多年百事是虚名。

 

 

  芳草雨 逍雀

萬紫無人掃,誰知隔歳華。

新園芳草雨,舊邸侍臣家。

 

 

  勝花時 逍雀

柿熟芭蕉裂,雲流節序移。

應看残照外,一路勝花時。

 

 

  飄花江上 逍雀

尺雪闢V地,飄花江上風。

囲炉村路絶,袖手一釣翁。

 

 

  爲米慧清女士題照 劉繁柱

気蒸雲夢漫飛烟,水映金陽錦綉園。

湖影山光西子貌,空濛艶麗自天然。

 

 

 

2−07-虚接

 

 虚句とは、目に見えない事柄を叙した句を謂い、虚句を絶句の第三句、即ち転句に用いた作品を虚接の作品という。

 概ね第三句に虚語を用いているのが虚接で有る。だが事実を述べている様で、実は虚句で有る場合も有って、その区別は簡単ではない。虚接は才気を発揮する変化に富んだ手法である。

 

 従って虚接の句は技術的により高度なものが要求され、そこには前後句との自ずから成る調和がなければ成らず、彫琢の跡が見えるようでは浅薄になる。

 絶句の作り易さから謂えば、転句に虚句を用いて、合句に実句を用いる配分が比較的作りやすく、安定した作品ができる。

 

  秋思 張籍

洛陽城裏見秋風,欲作家書意萬里。

復恐匆匆説不盡,行人臨發又開封。

 

 

  寄友 李郡玉

野水晴山雪後時,獨行村道更相思。

無因一向渓橋酔,處處寒梅映酒旗。

 

 

  宮人斜 雍祐之

幾多紅粉委黄泥,野鳥如歌又似啼。

應有春魂化為燕,年年飛入未央棲。

 

 

  自遺 陸亀豪

數尺遊絲堕壁空,年年長是惹春風。

争知天上無人住,亦有春愁鶴髪翁。

 

 

  訪隠者不遇 寶鞏

籬外涓涓澗水流,槿花半照夕陽収。

欲題名字知相訪,又恐芭蕉不耐秋。

 

 

  厳冬 逍雀

門巷人語絶,窗前玉樹生。

多愁羞素志,禍福是虚聲。

 

 

  七言絶句 逍雀

寒窗破壁夜方深,竹馬登仙冷透襟。

読罷信書燈欲凍,紛紛暁雪白塵侵。

 

 

  三四輩 逍雀

茶店無人訪,難抛梅一枝。

我約三四輩,買酔得新詩。

 

 

  七絶 逍雀

枝頭残雪竹籬邊,凍指摘芽候気先。

欲給春香晩餐菜,寸心況復罩厨烟。

 

 

  五絶 逍雀

老樹花空落,優游日正長。

偸閑何事好,凭欄浴春光。

 

 

  打?河新歌 王佑之

桐花開過李花香,踏?茶場踏月場。

對面青山揮油彩,彎彎碧水似柔腸。

 

 

 

2−08-孤平

 

 孤平には二つの考え方がある。

 

 

1−平脚の句で、

 韻字以外で平声を一っしか残さない(通算二っ)事を孤平と謂う。

 

 五言の場合、例えば「○○ ●●☆」の第一字目の○を●にしてしまうと、●○ ●●☆に成って、韻字以外に、平○が一つになってしまう。因ってこの様な状態を「孤平」と謂う。

 

 七言の場合、例えば「●●○○ ●●☆」の第三字の○を●にしてしまうと、●●●○ ●●☆に成って、韻字以外に、平○が一つになってしまう。因ってこの様な状態を「孤平」と謂う。

 

 

2−句の中で

 二つの仄聲字の間に一つの平聲字が挟まれた場合、その他に平聲字が有ることを問はず、全て孤平として考える。

 

 例えば「○○●●○」は第一字目が仄聲に変わったら、●○●●○と成って、孤平を犯してしまう事となる。

 

 また七言の場合は、「●●○○ ●●☆」の第三字が仄聲に変わったら、●●●○ ●●☆と成って、第四字目は仄聲に挟まれて孤平と成る。

 

【補解】孤平を救う方法が有り、この方法を「拗救」と言う

 

 

 

2−09-拗救

 

 拗救とは「ねじれを救う」事で、新体定型詩は厳格な平仄配列が規定されている。然しながら実際問題としては、これを全部クリアーして作詩することは困難である。この規格から外れたことを“拗”(ヨウねじれる)と云い、これを救うことを“拗救”と云う。

 

 これには二つの方法があり

 

1:本句救

 同一句の中で救う。もし仄文字の所ろを平文字にした場合、仄が減って平が増えたから、ほかの平の文字を仄の文字と入れ替え、全体として平仄規定の文字数とすること。

 

  石頭城 劉禹錫

●●○○○●●,  定格

淮水東邊舊時月,

○●○○●○●,  拗救

 

○○●●●○◎。  定格

夜深還過女墻來。

●○○●●○◎。  拗救

 

 

 

2:對句救;

 前の例で、もしその句の中で処理できなかった場合。次の句若しくは手前の句で処理し、二句を通算して規定通りの平仄の文字数に合わせること。

 ただし手前の句と謂っても、承句と転句の間では出来ない。同様に律詩の場合は聯を跨いでは出来ない。即ち出句と落句の中で処理しなければ成らないのである。

 

  與諸子登山看山 孟浩然

●●○○●,    定格

人事有代謝,

○●●●●,    拗救

 

○○●●◎。    定格

往来成古今。

●○○●◎。    拗救

 

【補解】拗救は章の中でのみ遣り繰りが出来て、章を跨いでの遣り繰りは出来ない。

 

【補解】韻字以外に、平が一つになってしまう孤平

○●○○●,  【注】を増やして拗救

 

●○●●☆。  【注】孤平の原因

【補解】出句の【注】箇所を平聲字にして承句の【注】箇所の孤平の原因を救う。

 

○○○●○●●,  【注】を増やして拗救

 

●●●○●●☆。  【注】孤平の原因

【補解】出句の【注】箇所を平聲字にして承句の【注】箇所の孤平の原因を救う。

【補解】句の中で二つの仄聲字の間に、一つの平聲字が挟まれた場合の孤平。

 

●○○●○○●,  【注】を増やして拗救

 

○●●○●●☆。  【注】孤平の原因

【補解】出句の【注】箇所を平聲字にして承句の【注】箇所の孤平の原因を救う。

【補解】孤平の原因は、何れも一三五平仄不問の箇所で発生する。この弊を取り除くために、対応する句の一三五の箇所で対応する。

【補解】詩の定型(平仄配置図)を見ると、随分と平仄不問の箇所がある。然しながら現実には全くの不問ではないのである。即ち「出句と落句」の中にあっては、平声と仄声の数が定まって居るのである。

【補解】拗救をしなかった場合は、拗れっぱなしと成り、拗救をすれば正格の範疇に入る。

 

 

 

2−10-用事

 

 用事とは故事を用いること、即ち歴史上の言葉の一部を用いることに依って、一句七文字では表現できない多くの事柄を凝縮させることができる。

 

 しかしそれには、句中によく馴染む事が肝要であって、当を得ないと故事だけが浮き上がって混乱を来し、却って詩を駄目にしてしまうから注意を要す。

 

  秋日過員太祝林園 李渉

望水訪山二里餘,竹林斜到地仙居。

秋光何處堪消日,玄晏先生満架書。

【註】望水訪山の句法は、互換の項を参照

【註】玄晏先生;参照晋書列伝

 

 

  焚書坑 章碣

竹帛烟消帝業虚,関河空鎖祖龍居。

坑灰未冷山東亂,劉項元来不読書。

【註】焚書坑儒;史記 秦始皇帝 李斯列伝

     劉項;史記 項羽本紀 高祖列伝

 

  秦淮 杜牧

烟籠寒水月籠沙,夜泊秦淮近酒家。

商女不知亡国恨,隔江猶唱後庭歌。

 

【註】玉樹後庭歌  陳後主

麗宇芳林對高閣,新妝艶質本傾城。

映戸凝嬌乍不進,出帳含態笑相迎。

妖姫臉似花含露,玉樹流光照後庭。

 

【補解】用事法には、故事を取り巻く語句の取り扱いにおいて概ね三通りの方法がある。

 

 

1− 故事に対して「順」

  主題が故事によって補完される効果がある。

  作品の殆どは、「順」で有る。

 

 

2−故事に対して「逆」

  故事と対比させることによって、主題を際立たせる効果がある。

 

 

3−故事の字句を一部変更する。

  読者が当然知っている故事と、字句を入れ替えた故事とを対比させ、主題を際立たせる効果がある。

  入れ替える字句は、「逆」とすれば、その効果が発揮できるが、曖昧だと却って逆効果となる。

 

  未到愚公歳 逍雀

案句耽吟共討論,何嫌寒窗究誌魂。

霜頭未到愚公歳,只畏懐痾已九泉。

 

 

  風月何齎 逍雀

多年案句乏時才,風月何齎紅葉媒?

雨寫芭蕉揮醉筆,秋収水果無楓臺。

 

 

 

2−11-前對

 

 一般には四句構成の作品で、手前の二句が對仗に成っている作品を言う。そう言われると、後側の二句はどうかと言われるが、後側の二句は對仗でないもの、という前提がある。後側の二句も對仗の作品、即ち四句とも對の作品は「全對」と言う。

 

 前二句が對仗と言う事は、起句と承句が對仗と言う事となる。起句は出だしの句で、承句は其れを引き継ぐ句であるから、叙事内容に於いては、さほどの違いはない。

 承句は、起句よりは多少絞り込まれたと言うほどだろう。転句ほどの違いは無いのである。依って、前對だからと言って、全体の構成に留意しなければ成らないと言う事はない。

 

 さて、對仗として綴る場合に二通りの方法がある。

1−出句と落句とをほぼ並列に並べる方法。

2−出句と落句とに時間的に前後の関係を持たせる方法。

  前後とは、出句と落句を逆に読んだ場合、齟齬が生じる 形態を言う。

 幾つかの例を示して見よう。

 

起句 ●●○○●,

承句 ○○●●☆。

転句 ○○○●●,

合句 ●●●○☆。

 

【補解】殆ど同じ語彙を用いて、趣旨の異なる作例を示す。

 

  題空房図画 逍雀

柿熟斜陽色,香吹陋巷秋。   前後の関係がない

空房懸画面,路断繋耕牛。

 

 

  行人逢秋 逍雀

星漢輝如昼,行人別有郷。

還思君健否,山駅入秋香。

 

 

  題空房図画 逍雀

柿熟斜陽色,雀啄富味秋。   前後の関係がある

空房懸画面,路断繋耕牛。

 

 

  農夫帰郷 逍雀

星漢輝如昼,農夫去向郷。

還思秋漾漾,山駅入秋香。

 

起句 ○○●●○○●,

承句 ●●○○●●☆。

転句 ●●○○○●●,

合句 ○○●●●○☆。

【注】殆ど同じ語彙を用いて、趣旨の異なる作例を示した。

 

  工人想故郷 逍雀

蓬頭拭汗堪炎暑,驟雨跳珠亂暮蝉。

(前後の関係がない)

手冊密藏妻子貌,工棚洗臉落暉前。

 

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