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 自序

 著者は拙著漢詩詞講座で、現代漢民族詩歌と現代日本での漢詩とは、異なる!と度々説いてきた。

 双方の相違点を自覚するには、双方比較も其の一法として、茲に敢えて日本漢詩の書冊を編輯した。

 国際通用する漢詩詞創作を指向するのなら、先ず日本漢詩と當代中華詩詞壇通用の漢詩詞の相違点を自覚しなければならない。本冊作品と前巻鶏肋集作品を比較すれば、その相違点は明瞭である。

 この本は「日本漢詩」のテキストである。漢詩は漢民族の詩歌であるが、日本人も前代漢民族の作品を真似て漢詩を作った。即ちこれが日本漢詩である。

 現代中國での作品は、歳月の経過と共に、詩法も、使用する文字も、文字の意義も変化している。日本に伝来当初は双方共に、同じであったで有ろう作品が、現代では見た目は殆ど同じでも、お互いに若干異なる。

 即ち現代の中国人が創る漢詩を「漢詩」と謂うならば、現代の日本人が創る漢詩は、「日本漢詩」と謂える。

 さて本書の作品は漢字書きで、見た目は中國での漢詩に似ているが、その内容は「日本漢詩」で有る。

 

☆ 日本漢詩の場合は、読みも作品の一部と見なす傾向があるので、詩稿に添えられた投稿者の読みを、殆どその儘転 記した。

☆ 日本で通用している古典の詩法や句法や語句を使っているので、現代中国の人には読めない場合もある。

☆ ここでは平水韵を採用しているが、平水韵は、幾つかある制定韵の一つに過ぎない。現代中華詩詞壇では現代韵が主流で、平水韵は古典韵と謂われ、古典作品鑑賞用には使われるが、創作には殆ど使われない。

☆ 本書の作品は日本では通用するが、現代中華詩詞壇では殆ど通用しない。

☆ 作品には漢字の読みと意訳が付いている。辞書のページも記載してある。

 

   利用者の便宜を考慮して、以下の基準で編集した。

一  作品の傍らに、韵名称と平起仄起の別を記載した。

   韵に関わる記事は、現代韻表を参照の事。

二  全編を三部構成とした。

   A 春夏の季節に拘わる作品 一〇〇首 春夏の部

   B 秋冬の季節に拘わる作品 一〇〇首 秋冬の部

   C 季節に拘わり無き作品  一一二首 雑題の部

 此処に掲載する作品は、現在国際的に通用する作品と、詩法句法に於いて、基本的には差ほど異ならないが、ただ現実に現代の中華詩詞壇に通用させるには多分の難がある。

 日本漢詩と現代中華詩詞壇通用詩歌との相違点を挙げれば、詩法と文字と字義と創作の意図が挙げられる。

 日本漢詩は漢詩詞伝来当時の詩法を綿綿と踏襲しているが、中華大陸に於いては、歳月と共に変化していて、長い間には、双方に相違が出て来ることは当然の理である。

 現代漢民族は常用書面漢語で綴るが、日本漢詩には、中國では既に常用していない古漢語などの語法が混在し、彼等にとっては、古漢語作品の範疇に有ると言える。

 更に叙事法に於いては、作詩の態度と、物事の捉え方に相違がある。漢民族の詩家にとって最も重要な要素は、他者に訴えようとする意図である。

 然し本冊に採用した作品の殆どは、告訴意図が稀薄で、自己詠嘆が主流であるから、例え読めたとしても、漢民族詩詞壇での評価は低いと謂わざるを得ない。だが日本国内漢詩壇では、充分に通用することを書き添えておく。

 なお国際通用する作品は、拙著「中山逍雀漢詩詞講座 詩詞聯 鶏肋作品集」にあるので、双方を比べれば、初心者でも、一目瞭然にその違いが分かる。

 

曄歌坤歌偲歌瀛歌三連五七律自由漢詩笠翁対韻羊角対漢歌漢俳填詞詩余元曲散曲楹聯はこの講座に記載があります