漢詩詞教本古典基05 中山逍雀漢詩詞創作講座填詞詩余楹聯こちらからお探し下さい
3-13 実句・実接
3-14 虚句・虚接
詩句には実と虚と云う語句が屡々登場する。簡単に云えば、「実」とは目に見えるもの、「虚」とは目に見えないものと言える。
乃ち実句とは目に見える物事を著した句の事で、虚句とは、目に見えない物事を著した句のことである。
実接とは、絶句の第三句、乃ち転句の状態を指し、転句が、目に見える物事を著していれば、「実接」と云い、目に見えない物事を著していれば「虚接」と云う。
楓橋夜泊 張継
月落烏啼霜満天,江楓漁火対愁眠。姑蘇城外寒山寺,夜半鐘声到客船。
姑蘇城外寒山寺は状景描写だから実句で、実接の詩と云う。
秋思 許渾(杜牧)
h樹西風枕簟秋,楚雲湘水憶同遊。高歌一曲掩明鏡,昨日少年今白頭。
高歌一曲掩明鏡は状景描写だから実句で、実接の詩という。
秋思 張籍
洛陽城裏見秋風,欲作家書意萬重。復恐匆々説不尽,行人臨発又開封。
復恐匆々説不尽は情の描写だから虚句で、虚接の詩と云う。
九日懐山東兄弟 王維
獨在異郷為異客,毎逢佳節倍思親。遙知兄弟登高処,遍插茱萸少一人。
遙知兄弟登高処は情の描写だから虚句で虚接の詩と云う。
ここで二つの発見がある。
実接の句は第一番目の文字が実字であり、虚接の句は虚字である(殆どと断りを入れよう。)
実接は景を著し、虚接は情を著す。実接は剛直にして虚接は柔弱で有るとも云う。
3-15 拗の救いかた
この項目は、中国の漢詩指導書には記載されている事柄だが、日本の指導書には殆どその記載を看ない。よって日本の漢詩関係者は殆ど拗救に対する認識がないと言える。
七言絶句平起式を例に説明を加えよう。
基本的な平仄配置は
(出句)起句○○●●、●○◎, (落句)承句●●○○、●●◎。
変更可能な部分を示せば
(出句)起句△○▲●、●○◎, (落句)承句▲●△○、▲●◎。
「拗」とはねじれると云う意味で、基本配置から外れた状態を云い、△や▲の状態を云う。拗救とは、ねじれの調整を云う。
先ず起句(出句)では基本的に「平」字で有るべき文字が4個
「仄」字で有るべき文字が3個で都合7文字となる。
△▲で平仄何れでも良いと云ってはいるが、実はそうではない。平文字で有るべき所を仄文字にしたときは、仄文字で有るべき所を平文字にしなければならない。この事はどの句にも言えることである。
もしどうしてもその句の中で処理できないときは落句で調整しても良い。その逆も言える。但し章を異にすることは出来ない。
例を挙げてみよう。
(出句)起句●○○●、●○◎, (落句)承句●●○○、●●◎。出句を調整した例
(出句)起句○○●●、●○◎, (落句)承句○●●○、○●◎。落句を調整した例
(出句)転句●●●○、○●●,
(落句)結句○○○●、●○◎。出句と落句で調整した例
4−七言律詩
律詩は古詩から派生した詩型で、柔軟な構造の古詩をより規格化した詩型である。絶句(律絶)の基と成った詩型でもある。
七言律詩平起式基本形
起聯○○●●、●○◎,●●○○、●●◎。
頷聯●●○○、○●●, ○○●●、●○◎。(対句)
頸聯○○●●、○○●,●●○○、●●◎。(対句)
結聯●●○○、○●●, ○○●●、●○◎。
頷聯と頸聯の落句を各々対句にすることが律詩の主立った規約である。]
3-13 実句・実接
3-14 虚句・虚接
詩句には実と虚と云う語句が屡々登場する。簡単に云えば、「実」とは目に見えるもの、「虚」とは目に見えないものと言える。
乃ち実句とは目に見える物事を著した句の事で、虚句とは、目に見えない物事を著した句のことである。
実接とは、絶句の第三句、乃ち転句の状態を指し、転句が、目に見える物事を著していれば、「実接」と云い、目に見えない物事を著していれば「虚接」と云う。
楓橋夜泊 張継
月落烏啼霜満天,江楓漁火対愁眠。姑蘇城外寒山寺,夜半鐘声到客船。
姑蘇城外寒山寺は情景描写だから実句で、実接の詩と云う。
秋思 許渾(杜牧)
h樹西風枕簟秋,楚雲湘水憶同遊。高歌一曲掩明鏡,昨日少年今白頭。
高歌一曲掩明鏡は情景描写だから実句で、実接の詩という。
秋思 張籍
洛陽城裏見秋風,欲作家書意萬重。復恐匆々説不尽,行人臨発又開封。
復恐匆々説不尽は情の描写だから虚句で、虚接の詩と云う。
九日懐山東兄弟 王維
獨在異郷為異客,毎逢佳節倍思親。遙知兄弟登高処,遍插茱萸少一人。
遙知兄弟登高処は情の描写だから虚句で虚接の詩と云う。
ここで二つの発見がある。
実接の句は第一番目の文字が実字であり、虚接の句は虚字である(殆どと断りを入れよう。)
実接は景を著し、虚接は情を著す。実接は剛直にして虚接は柔弱で有るとも云う。
3-15 拗の救いかた
この項目は、中国の漢詩指導書には記載されている事柄だが、日本の指導書には殆どその記載を看ない。よって日本の漢詩関係者は殆ど拗救に対する認識がないと言える。
七言絶句平起式を例に説明を加えよう。
基本的な平仄配置は
(出句)起句○○●●、●○◎, (落句)承句●●○○、●●◎。
変更可能な部分を示せば
(出句)起句△○▲●、●○◎, (落句)承句▲●△○、▲●◎。
「拗」とはねじれると云う意味で、基本配置から外れた状態を云い、△や▲の状態を云う。拗救とは、ねじれの調整を云う。
先ず起句(出句)では基本的に「平」字で有るべき文字が4個
「仄」字で有るべき文字が3個で都合7文字となる。
△▲で平仄何れでも良いと云ってはいるが、実はそうではない。平文字で有るべき所を仄文字にしたときは、仄文字で有るべき所を平文字にしなければならない。この事はどの句にも言えることである。
もしどうしてもその句の中で処理できないときは落句で調整しても良い。その逆も言える。但し章を異にすることは出来ない。
例を挙げてみよう。
(出句)起句●○○●、●○◎, (落句)承句●●○○、●●◎。出句を調整した例
(出句)起句○○●●、●○◎, (落句)承句○●●○、○●◎。落句を調整した例
(出句)転句●●●○、○●●, (落句)結句○○○●、●○◎。出句と落句で調整した例
4−七言律詩
律詩は古詩から派生した詩型で、柔軟な構造の古詩をより規格化した詩型である。絶句(律絶)の基と成った詩型でもある。
七言律詩平起式基本形
起聯○○●●、●○◎,●●○○、●●◎。
頷聯●●○○、○●●, ○○●●、●○◎。(対句)
頸聯○○●●、○○●,●●○○、●●◎。(対句)
結聯●●○○、○●●, ○○●●、●○◎。
頷聯と頸聯の落句を各々対句にすることが律詩の主立った規約である。
4-1 前実後虚
頷聯と頸聯に対する規格で、頷聯を「前」と云い、頸聯を「後」と云う。
乃ち頷聯が実句で、頸聯が虚句である作品を云う。実句は剛直を著し虚句は柔弱を著すので、剛揉相対して程良く纏まりやすい形態で有る。
晏安寺 李紳
寺深松桂無塵事,地接荒郊帯夕陽。啼鳥歇時山寂寂,野花残処月蒼々。
碧紗凝艶開金象,清梵銷声閉竹房。丘隴漸平連茂草,九原何処不心傷。
啼鳥歇時山寂寂,野花残処月蒼々の句は実景を描写し、碧紗凝艶開金象,清梵銷声閉竹房の句は情を描写している。
4-2 前虚後実
乃ち頷聯が虚句で、頸聯が実句である作品を云う。前実後虚の逆で、前に情を描写し、後に景を描写する手法。
黄鶴楼 崔
昔人已乗白雲去,此地空余黄鶴楼。黄鶴一去不復返,白雲千載空悠々。
晴川歴々漢陽樹,芳草萋々鸚鵡州。日暮郷関何処是,烟波江上使人愁。
黄鶴一去不復返,白雲千載空悠々の句は情を描写し、晴川歴々漢陽樹,芳草萋々鸚鵡州の句は実景を描写している。
4-3 四実
乃ち頷聯が実句で、頸聯も実句である作品を云う。
詩の要旨は、情を著す事にあるので、全実では情の句が欠ける。そのままでは情に欠け殺風景な風采と成る。景を以て如何に情を著すかが作詩上の要旨である。
和楽天早春見寄 元?zhen
雨香雲淡覚微和,誰送春深入棹歌。萓近北堂穿土早,柳偏東面受風多。
湖添水色消残雪,江送潮頭湧漫波。同受新年不同賞,無由縮地欲如何。
萓近北堂穿土早,柳偏東面受風多の句は実景を描写し、湖添水色消残雪,江送潮頭湧漫波の句も同様に実景を描写している。因って四句とも実景を描写しているので四実という。
詩の胴体に当たる部分が、四句とも同じ描写法では平坦に過ぎるので、句法を変えるなどの考慮が必要である。
4-4 四虚
乃ち頷聯が虚句で、頸聯も虚句である作品を云う。
全句が情では柔弱に陥りやすい。読者の入り込む余地を奪う。情を以て如何に景を著すかが作詩上の要旨である。
贈王尊師 姚合
先生自説瀛洲路,多在青松白石閑。海岸夜中常見日,仙宮深処却無山。
犬随鶴去游諸洞,龍作人来問大還。今日偶聞塵外事,朝簪未擲復何顔。
海岸夜中常見日,仙宮深処却無山も犬随鶴去游諸洞,龍作人来問大還も情を描写する虚句で有る。因って四虚という。
4-5 全對格
律詩8句の中、落句総てが対句である作品を云う。
対関係の句は互いに補完し逢うと同時に互いに凝縮しやすい。碁盤の目のような形態は却って息苦しさを感じさせる。対でありながら如何に対を意識させないかが作詩上の要旨。
拙作松戸四季八景詩春常磐平桜の詩を少し拈って全對格にしてみよう。
邑閭暮景風猶冷,茂樹枝頭花已闌。
秀萼千紅繆酔脚,香塵一白落晶盤。
愛桜歩燭江湖愉,扶老拏児菽水歓。
素月半輪春靄裏,誰歌数曲玉華壇。
この作品の落句で、対句でないのは誰歌数曲玉華壇の句丈である。
素月半輪春靄裏,
誰歌数曲玉華壇。と並べてみると、誰歌を変更すればさしあたって事は済む。素月に対して新謡としてはどうか?(この作品は元々全對格で有ったものを閉塞感を破るために、敢えて4章目の出句をはずしたものだ)
邑閭暮景風猶冷,茂樹枝頭花已闌。秀萼千紅繆酔脚,香塵一白落晶盤。
愛桜歩燭江湖愉,扶老拏児菽水歓。素月半輪春靄裏,新謡数曲玉華壇。
5−作品の形態
今まで饅頭の皮の作り方ばっかり説明したが、今度は中身のあんこを説明しよう。とは云っても味付けのことではない。白あんか?小豆あんか?の問題である。味付け法は添削でしか指導できないのでもう少し待って下さい。
5-1 集句
漢詩を囓った人が陥りやすい事に作品の盗用がある。日本人の作品集などを見ると、聞いたことのある語句や発想は時折有る。発想と語句が何れか片方なら創作の作品となるが、両方とも揃うと我が目を疑いたくなる。何処までが盗用で何処からが創作か異論の多いことだが、“集句”とは盗用ではなくれっきとした創作作品である。
既存の作品から、適切な句を4句若しくは8句選び出し、一首の作品を作る。聞くと作るのでは大違いで、最初から自分で作った方が随分と楽だ。却って読書量が試される。先ず題の次に集句と書き入れ、各々の句の次に借用先を記載する。
秋夜集句 梁橋
西風吹雨滴寒更,秦韜玉
宋玉含凄夢亦驚。許渾
楊柳敗梢飛葉響,譚用
千家砧杵共秋声。銭起
5-2 柏梁体
柏梁体の起こりは、漢の武帝が群臣を柏梁台に集めて七言の聯句を作らせたのが始まりと云われているが、異論も多い。
詩會など多人数が参加する作詩法で、先ず主催が題と韻を決め各韻文字を書いた紙片を無作為に配布する。受け取った人は紙片の韻文字を句末に用いて、残りの6文字は平仄を問はず、趣旨に添った一句七文字の句を作る。
全員の紙片を回収し題意に沿った内容になるよう、紙片を並べ合わせ一詩とすれば、乃ち平仄を問はない全句押韻の聯句と云うこととなる。詩會余興の一つである。
曄歌坤歌偲歌瀛歌三連五七律自由詩笠翁対韻羊角対漢歌漢俳填詞詩余元曲散曲楹聯