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 ハ 実作

 中国語は日本語とは文法が異なり日本語の通りに漢字を並べたのでは相手に読めない。
 文法と言っても複雑多岐で一概には説明の仕様がないが、この新しい詩形は三文字句と四文字句しか無いのだから、さして難しいことはない。
 新詩体詩歌の場合は文字数が少ないので構造は簡単で、主語+述語+目的語の順番で必要な語だけ並べれば、ほぼ間違いなく句は出来る。
 漢詩を作るには平仄や韻の問題などややこしいが、この新詩体はそれらややこしい事は一切作者の自由だから、差し当たってただ漢字を並べればよい。
例えば
述名  主 述目 主述  名詞    述目
繋軽船 涼気侵肌 人盡散 十三夜月 遥挂松枝    (肌枝押韻)
小舟は繋がれ 涼風が肌に感じる。 人は家路に就き 十三夜の月が 遥かな松の枝に掛かる。

名   述名述名 名   形 名  形 名
熊野路 有瀑有山 神佛郷 隠々鐘声 瀟々秋雨
熊野路に 瀧も山もあり 神仏の居ます所 地を這う鐘の音と しとしとと降る秋雨

名   述目   名   名      述目
酒一巵 酔菊花陰  邯鄲夢 五柳先生 慌張閉門
大杯に一杯の酒 菊の花の陰に酔えば 暫しの夢うつつ 陶淵明先生 慌てて門を閉めて居るではないか。(どうも私は疎まれているようだ)

 俳句や短歌などの、日本詩歌の指導に携わっている先生方ならば、却って漢詩作家よりも、詩歌の特徴を心得ているし、既に日本詩歌に適した語彙を沢山御存知だから、形式だけ理解すれば、即座に対応できる易しい定型の詩歌と言える。
 漢字は中國と日本では多少意義が違う場合があり、文字の選択は相手の理解を基準に選ばねばならず、日本語ではこうなんだ、と言い張る人が居るが、相手に読んで貰いたいなら相手に合わせることは当然で、文字の理解は中國の方々の一般的な意義を基準として、相手に特異な意義を求めても其れは独りよがりで、文化の交流とは理念を異にする。
 これら中国語との相違点を知るには日本語の漢和辞典では無理なので、中国人が使用する中國の国語辞典を用意すると都合がよいが、小学中学生用で充分に事足りる。
 三文字熟語や四文字塾語集は日本人に馴染み深いが、これは余りにも立派すぎて、バランスが取れず、漢和辞典は熟語の宝庫だが余りに精緻に過ぎて却って使いにくいので、熟語だけを集めた本があるので利用すると良い。
 此処に紹介する本は、説明書きが少なく、詩語の編輯に力点を置いているので、詩語検索者には利用し易いので紙面で推薦する。
 尚この詩語集積書は、漢詩を作る為の書籍で、平仄や韻を細かく分類して有るが、新詩体詩歌は平仄押韵無用であるから、表記には囚われず熟語だけを使えばよい。
 この詩語集積書と漢和辞典を用意すれば、絶句律詩歌行填詞など殆ど総ての中国詩歌に対応できるから、新詩体詩歌で押韵を為される方にも充分対応できる。

呂山 太刀掛重男 著  詩語完備 だれにもできる漢詩の作り方
発行所 呂山詩書刊行会
〒七三一ー〇一 広島市安佐南区西原四丁目二三ー十五ー十一
電話 〇八二ー八七一ー六一七六 振替 〇一三五〇ー五ー六四七三

 韻は時代と共に変遷し、現在は中華新韻が出回っている。此は18韻であり現在の普通話に会わせているので、これからは新韻を用いる事も検討に値する。但し中国詩壇では内地人は古典韵と新韵何れでも良いが、外地人は古典韵と定められているところが多い。
 上海古籍出版社で編集出版されている。
完読ご苦労様でした。

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