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偲歌(さいか)TopPage

 偲歌は、都々逸を父とし漢詩詞を母として生まれた新たな詩形である。だが都々逸を父とはしているが母の血筋を引き漢詩詞の仲間に入る。中国詩詞の中で最も都々逸と同列に扱える詩形で有る。
 偲歌は独立した固有の詩形であって、都々逸の漢字書きと言う立場の詩形ではありません。
 そして都々逸の血筋を引くので、都々逸を漢字書きに書き換えるには、最も簡便にして適切な詩形である。日本人が創った都々逸を中国人向けに、偲歌に書き換える事も簡単だし、中国人が創った偲歌を都々逸に書き換える事も至極簡単である。

偲歌構成の要件
1−詩語を用いる事
2−押韻する事
3−キーワード語を用いる事
4−漢字で綴る事
5−4文字+4文字+4文字+3文字 の構成である事
6−平三連・仄三連は避ける事
7−叙事内容を男女の情愛・艶情に限る事

 ここで重要なことは、その成立過程が日本詩歌を母とし、中国詩詞を父としているので、中国詩詞としての構成法も併せ持たなければならない。即ち、日本詩歌は本来一行詩で有って、長年の間に句意の配置と音数律の好配合によって現在の姿に区切られるようになったという経緯がある。だが現実には総音数と句数は要件となるが、音数の配置は柔軟に扱われている。だから、漢字綴りにする場合は、中国文化に倣った漢字句の構成習慣に依ることが最も適切な詩法である。
 即ち、偲歌 ○○○○+○○○○+○○○○+○○○ の句の字数配置は、絶対的な要件ではないのである。総数が十五文字で四句構成ならば、文字の総数と句数を順守すれば、各々の句の文字数は、適宜配分しても詩法に適うのである。

1−
 こんなにも短い句を、其れも首尾一貫しない句を書いて、これが詩作品で有ると言ったら、日本人なら納得出来るが、中国人では恐らく誰も、詩だとは思わないだろう。何故なら首尾一貫している事が中国詩歌の条件だから、首尾一貫していない句を詩作品とは思わないのである。
 其れを詩作品と思わせる為には、古典詩詞作品に用いられている言葉「詩語」を用いる事である。「詩語」を用いてあると詩作品であると言う先入観が働いて、偲歌のような短小な首尾一貫していない作品も詩作品であると納得するのである。もう一点、「四字熟語辞典」を用いると良い。四字熟語は、文字はたったの四字だが、中身はギッシリ内容の詰まっていて、短詩にはとても好都合な詩語の宝庫だ。

2−
 詩詞と散文の分岐要件は、押韻の有無である。だから押韻しない駢儷文は文の範疇に入るのである。押韻して有れば上手下手はあるが一応は「詩詞」の範疇にはいるのである。押韻の箇所は句意末字が妥当である。

3−
 少ない文字数で多くの情報を収めるには、典古は技巧上必要な要件である。

4−
 漢詩詞の一類で有るから漢字で綴る事は勿論の事である。

5−
 偲歌の文字構成は、4文字+4文字+4文字+3文字 と定める。

6−
 平平平平や仄仄仄仄とやたらに並べるのは、素人考えでも拙い事は判るでしょう。殊に仄仄仄仄は「東京特許許可局」に成りやすいから注意が必要です。読みにくかったら上手下手以前の問題です。平三連・仄三連は避ける事は必要です。

7−
 偲歌の特長は、叙事内容が「男女の情愛・艶情」に限定されていると言う事です。ですから、例え形式では偲歌と同じで有っても、叙事内容が「男女の情愛・艶情」でなければ、その作品は偲歌ではありません。

偲歌学習の必要性
 偲歌は男女間の愛情に限るが、人情の機微描写を学習するには、偲歌の学習が必要である。

注意点
 「漢和辞典を用いて、語彙を捜せば漢詩詞が出来る」と謂う人が居るが、これは誤りである。漢和辞典は日本語の辞書で中国語の辞書ではないのである。更に漢和辞典の語彙は一般的な語彙であって、詩語の語彙ばかりとは限らないのである。詩語とは「雅味」を持った語彙で、一般語彙とは多少違うのである。日本人には其れの判別が難しいので、「詩語集積」に頼った方が無難である。偲歌は都々逸の漢字書きでは無いのだから、都々逸の詩法に照らしての云々は不要である。偲歌は曄歌や坤歌とは大分趣が違い、男女の情愛や艶情を詠う事を専らとするのです。ですから、とても難しいのです。上手下手以前に、一寸気を緩めると低俗に陥るのです。上品でなければならないのです。

 此処に作品例を挙げてみましょう。この作品は日本人の作も有れば、中国人の作品もあります。どちらがどちらか判別が出来ますか?判別が付かないでしょう!これが漢詩詞創作の醍醐味なのです。

 ○○○○ ○○○○ ○○○○ ○○○ 即ち四四四三なのです。押韻する場所は、句意の切れ目です。

蓬髪暗香,枕上愁眉。夢裡青山,醒又疑。 
髪の香りに、目覚める愁眉。夢の青山、まだのこる。

赴任多年,蜀雨巫雲。欲語別情,已厭聞。 
単身赴任は、巫山の愛も。別れ辛さも、冷めさせる。

雨断残紅,夢断孤篷。飄然傘過,小橋東。
雨に紅散り、とまやの夢も。傘の別れは、橋のはて。

小草青青,鳥語相鳴。斜陽点綴,在野亭。
草は青あお、鳴く鳥ふたり。夕陽ちらちら、野のやどに。

寛衢狭甬,擺攤倒厰,下崗回春,壮夫婦。
リストラ会社の,製品並べ,路地で商う,夫婦仲。

天涯闊別,雁者魚也。姑從幻夢,慰痴心。
雁もさかなも,文運ばない。夢で遭ふては,慰める。

  漢字書きが原作で、日本語書きは後で付け加えたものです。

既我也君,没有花銭。兩支麦管,對陶然。
急忙回家,斜陽寒鴉。没有意図,染紅雛。
勧誘誰人?噴香穿羅。紅燈春夜,沈丁花。
没有意図,享受斜陽。闇夜胡蝶,留鬱香。
故意擦膏,淡唇紅美。回敬酒杯,話引子。
只穿浴衣,隣家少女。腫起胸部,春情曙。

 

注:◎ 平聲仄聲を問わない押韵
注:☆ 平聲の韵
注:★ 仄聲の韵
注:● 仄聲
注:○ 平聲
注:△ 基本は平聲だが仄聲でも可
注:▲ 基本は仄聲だが平聲でも可
注: 領字
注:※ 句法に叶えば平聲仄聲を問わない

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