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お断り
 漢俳は俳句との関わりが言われているので、俳句関連の諸賢も閲覧される機会が有ると思われます。編者は俳句の詩法を知りません。依って本稿の解説は漢詩詞の一類としての解説で、俳句との関連については、一切の考慮をしておりません。

  漢詩詞としての約束事は、此処に書かれている事柄以上に、数多くあります。それらは通常のこととして敢えて書き込むことは致しておりません。依ってそのことを念頭にご閲覧為されることを希望します。

 今から20年ほど前、日本俳壇と中国詩壇の交流会席上、趙朴初先生が日本俳壇への敬意を込めて“漢俳”を披露したと聞き及ぶ。此の披露が、いつの間にか新たな定型として定着した。

 漢俳(漢字の戯れ言)を披露した趙朴初先生が、従来とは根本的に異なる画期的な叙事法を披露したとは聴いて居ないので、文字数は17字でも手法は中國の従来の手法を踏襲したと思はれる。又今までにもこの様な作品が無かった訳ではなく、時たま見受けられてはいた。

 中国詩の必要最小限の要素は、韻母と声調の二っである。そして韻母を重ねて用いる事を押韻と云い、漢俳も的確に押韻されている。

 講を開くに当たって、漢俳についての定義付けを行う事とする。もしその定義無しに漢俳を扱うならば、歴史に培われた数ある小令の中に埋もれて、その存在意義はなくなる。

 漢俳の講を開くに当たって、以下の如く定義する。
1−詩語を用いる事
2−押韻する事
3−漢字で綴る事
4−5文字+7文字+5文字 の構成である事
5−平三連・仄三連は避ける事
6−叙事内容は、日本俳句に準ずる。

1−
 漢俳は中国詞の小令程の大きさで、叙事法は中国詩詞の詩詞法を用いれば概ね不都合はない。とは言っても矢張り文字数が少ない事は否めない事実である。既存の小令とほぼ同じなら、中国詩詞を作る時と同じように「詩語」を用いる。

2−
 詩詞と散文の分岐要件は、押韻の有無である。だから押韻しない駢儷文は文の範疇に入るのである。押韻して有れば上手下手はあるが一応は「詩詞」の範疇に入るのである。押韻の数と箇所の指定はないが、句意末字押韻が妥当である。

3−
 漢詩詞の一類で有るから漢字で綴る事は勿論の事である。

4−
 漢俳の文字構成は、5文字+7文字+5文字 と定める。

5−
 平仄の配置と押韻の位置について、未だ定まった定型は見受けられないが、中国語の声調を知らぬ日本人は、目と定型に頼る外はない。中國詩友にこの点を尋ねて、ほぼ間違いを犯さない方法を伝授された。即ち、古典定型詩の平仄配列と押韻方を援用することが、間違いを犯さぬ方法として有効である。

6−
 漢俳の成立の由来が俳句に拘わり有る旨なので、日本俳句に準じる事は当然の理である。

 

漢俳定型の考察

 七言絶句の平仄押韵定型を援用して考察を試みると・・・

△○ ▲● △○●     −1

◎     −2
粘綴
●     −3

△○ ▲● ▲○◎     −4

 此の四句を考察すると、粘綴を挟んで前半と後半に分けられる。即ち
其の一

     ▲● △○●韵     −1

▲● △◎     −2
粘綴
     △●韵     −3

その二

     △◎     −2
       粘綴
▲● △●     −3

     ▲● ▲○◎     −4

の二通りの組み合わせがある。其の一の形態は、末句押韵が出来ないので、

−3 を ○○ ●●◎ に改める。

 句意の組み合わせは

其の一の場合は

     ▲● △○●     起句

▲● △◎     承句
       粘綴
     ○◎     合句

 

其の二の場合は

     △◎     起句
       粘綴
▲● △●     転句

     ▲● ▲○◎     合句

 

漢俳には三っの定型がある

其一 三句三章三押韻 打鐵韵とも言う
        □□□□◎
      □□□□□□◎
        □□□□◎
             各句一句一章

 

其二 三句二章二押韻
        □□□□◎  一句一章
□□□□□□□,□□□□◎  二句一章

 

其三 三句二章二押韻
□□□□□,□□□□□□◎  二句一章
        □□□□◎  一句一章

 

考察:
 五言句七言句の有り様について、単なる俳句との文字合わせだけの事柄に止まらない。

1−俳句を耳で聞いた場合概ね十七音の構成となり、漢俳も概ね十七音の構成となります。この事は、中国人の側から看て、俳句との同一性が認識される点であります。

2−漢俳の場合の、五字句と七字句の組み合わせは、
  五字句は観念的な表現に適し、七字句は情緒的な表現に適しているので、観念的な表現と情緒的な表現、の両者を組み合わせることによって、従来の定型詩にはない新たな詩境を創出する事が可能となる定型である。
(この詩法は三聯五七律に採用されています。定型編を参照して下さい)

三句押韵の場合
 前項の考察は二句押韵の例であるが、中国側から寄せられる作品に、三句押韵の作品少しではあるが存在する。然し基本的な要件は二句押韵の場合と全く変わっていない。即ち偶々韵字と同じ文字が句末に有った!と理解すれば良い。

 

注:◎ 平聲仄聲を問わない押韵
注:☆ 平聲の韵
注:★ 仄聲の韵
注:● 仄聲
注:○ 平聲
注:△ 基本は平聲だが仄聲でも可
注:▲ 基本は仄聲だが平聲でも可
注: 領字
注:※ 句法に叶えば平聲仄聲を問わない

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