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七言絶句TopPage

 七言絶句と謂うと、日本では平韻の格律詩を指すが、七言絶句には平韻の七言絶句と仄韵の七言絶句の二種類がある。

 平韻の七言絶句は、律詩から派生した格律として「律絶」と謂い、仄韵の七言絶句は、古詩から派生した格律として「古絶」と謂う。(日本では古絶と謂う概念が無く、厳然とした格律があるにも拘わらず、これを無視し、古詩の仲間に入れている。)

 絶句は四句より構成される定型詩である。各句は起句承句轉句合句(日本では結句と謂う)と謂う。更に起句と承句で一意を構成し一章を為す。同様に轉句と合句で一意を構成し一章を為す。そして起句を出だしの句として「出句」と謂い、承句を引き継ぎの句として「落句」と謂う。同様に轉句を出だしの句として「出句」と謂い、合句を引き継ぎの句として「落句」と謂う。一般的な綴り方は、
起句,承句。
轉句,合句。
の如く「,」と「。」を確実に書き入れる。更に句の内容如何によっては「?! ; : ・」などの記号を用いる。

 起句とは、書き出しの句である。前提のないところから書き出す。序文が有る場合は、序文に沿って書き出す。

 承句は、起句の末尾を基点として書き出す。基点を起句の末尾とすることは重要な要件である。起句の末尾を基点としなかった場合は、転句の要件と拘泥し、承句の意義を為さない。更に転句との齟齬を生じかねない。
 基点を起句の末尾に措くが、然し起句の延長上に在っては成らない。述べる方向を変えるのである。これにより趣意の広がりが確保される。
 もし承句が起句の延長上であった場合、趣意は精査に成るが、然し広がりが確保されない。
注:後對の場合は、承句の基点を故意に起句の意趣から離し、転句の役割を負わせる。これにより後對の弊を回避するのである。

 轉句は、起句並びに承句とは別個な處を基点として、句を起こす。然し如何に別個な基点とは謂っても、起句承句に収束可能な範囲で無ければならない。
 承句が広がりを担当するのに対して、転句は奥行き・厚さを担当する句で在る。起句承句に収束可能な範囲で、然もより多く離れることが、趣意に厚みを持たせるための要件である。

 合句を日本では結句と謂い、起承轉句の締めくくりの句・結論の句とされているが、この定義は誤りである。
 合句とは、結論を導き出す為の句である。読者が結論に到達できるように誘導する為の句で、決して結論を述べては成らない。

律絶(平韻)

七言絶句正格(平起式起句踏み落とし)
△ ○▲ ● △ ○ ●, 起句    
▲ ●△ ○ ▲ ● ☆, 承句  (平韻)
▲ ●△ ○ ○ ● ●。 転句    
△ ○▲ ● ● ○ ☆, 合句  (平韻)

 

七言絶句偏格(仄起式起句踏み落とし)
▲ ●△ ○ ○ ● ●, 起句
△ ○▲ ● ● ○ ☆。 承句  (平韻)
△ ○▲ ● △ ○ ●, 転句    
▲ ●△ ○ ▲ ● ☆。 合句  (平韻)

 

七言絶句正格平起式(起句押韻)
△ ○ ▲ ● ● ○ ☆, 起句  (平韻)
▲ ● △ ○ ▲ ● ☆。 承句  (平韻)
▲ ● △ ○ ○ ● ●, 転句    
△ ○ ▲ ● ● ○ ☆。 合句  (平韻)

 

七言絶句変格仄起式(起句押韻)
▲ ● △ ○ △ ● ☆, 起句  (平韻)
△ ○ ▲ ● ● ○ ☆。 承句  (平韻)
△ ○ ▲ ● △ ○ ●, 転句    
▲ ● △ ○ ▲ ● ☆。 合句  (平韻)

 平仄の配置を比べてみると、七言絶句偏格(平起平韻押韻)と七言絶句 側体仄起式(仄韻押韻)は平仄は位置が丁度逆である。

古絶(仄韵)

七言絶句正格平起式(仄韻押韻起句踏み落とし)
△ ○ ▲ ● ● ○ ○, 起句    
▲ ● △ ○ ○ ● ★。 承句  (仄韵)
▲ ● △ ○ ▲ ● ○, 転句    
△ ○ ▲ ● △ ○ ★。 合句  (仄韵)

 

七言絶句側体仄起式(仄韻押韻起句踏み落とし)
▲ ● △ ○ ▲ ● ○, 起句  
△ ○ ▲ ● △ ○ ★。 承句  (仄韵)
△ ○ ▲ ● ● ○ ○, 転句    
▲ ● △ ○ ○ ● ★。  合句  (仄韵)

七言絶句側体平起式(仄韻起句押韻)
△ ○ ▲ ● △ ○ ★, 起句  (仄韵)   
▲ ● △ ○ ○ ● ★。 承句  (仄韵)
▲ ● △ ○ ▲ ● ○, 転句    
△ ○ ▲ ● △ ○ ★。 合句  (仄韵)

七言絶句側体仄起式(仄韻起句押韻)
▲ ● △ ○ ○ ● ★, 起句  (仄韵)
△ ○ ▲ ● △ ○ ★。 承句  (仄韵)
△ ○ ▲ ● ● ○ ○, 転句    
▲ ● △ ○ ○ ● ★。 合句  (仄韵)

 ここに八種類の平仄形式を提示したが、この外にこれ迄の組み合わせを 更に前二句と後二句に分離し、これを互いに組み合わせる「拗体不粘格」 と云う形式があるが、仄韻の詩と並んで作例は極めて少ない。

 此処に律絶(平韻)の作例を示すが、古絶(仄韵)の作品は、韵が仄聲で有る他は、平韻の作品と全く同じである。

散體
深秋古駅菊花残,老痩風姿免俗難。
自識多年閑未得,香烟縷縷仰雲看。

 

全對(句の對)
楓懸廟塔小寒天,菊争氷姿仏殿前。
養拙栽花貧士楽,争優待客不惑年。

   (章の對)
千枝黄黄更開花,古刹庭前送幽香。
萬態清清眞似画,歓情意気得雕章。

 

前對
秋深蛬老落楓軽,句拙心傷閑夢驚。
正是年年吾輩事,霜晨沃野待晴耕。

 

後對
空庭老蛬送秋時,只有黄葩香未衰。
擾乱虚言人捨我,空留恋慕面凝脂。

 

注:◎ 平聲仄聲を問わない押韵
注:☆ 平聲の韵
注:★ 仄聲の韵
注:● 仄聲
注:○ 平聲
注:△ 基本は平聲だが仄聲でも可
注:▲ 基本は仄聲だが平聲でも可
注: 領字
注:※ 句法に叶えば平聲仄聲を問わない

 

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