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文字

 一つの漢字は幾つもの字形と幾つもの発音と幾つもの字義を持っている。其れを判別し使い分けているのは、概ね二字を単位として、その前後に有る文字との組み合わせで、読み方も字義も判断される。

 字対には二種類有ります。
1−
 文字面と意義が一致しない語彙があります。文字面で見ると対仗と成るが、意味の上からは対仗とは成らない。このアンバランスを利用した對法です。

2−
 漢字は幾つかの漢字の組み合わせで、一つの漢字を形成している。例えば「時」は「日+寺」の組み合わせで出来ている。同様に「明」は「日+月」、「晴」は「日+青」の如くである。文字を分解して、其一部を対仗の対照とする對法です。

 

1−

山椒架寒霧,池篠韵涼風。

 字面を見ると全く違和感がない。字面から見ると完全に對仗を成って居るのだが、この句は意味の上では、対を為していない。

 山椒は日本語の「サンショウ」では無いのである。中国語では「山の頂上」と言う意味である。山の頂上と池に生えている篠では、対には成らないのである。

 意味は兎も角として、文字面だけ合って居るのだから、對の範疇にしよう。と言うこの妥協の産物が文字對で有る。

海棠呼蝶芳草野,川藻流風浅水涯。

解:
 海棠は花木の名前で固有名詞です。海には関係のない語彙なのに、川藻は川に生えている藻の事で、川に関係する一般名詞である。依って、文字面では対仗と成るが、意義の上からは、対仗とは成らない。

紅女贈詩思君面,赤子立志凭机案。

解:
 紅女は機織り女の事。紅女humg2nu3 工女gong2nu3 と発音が似通っていることから用いられた語彙で、 紅色には全く関係有りません。赤子は、赤ちゃんが赤い色をしていることからきた名称で、汚れのない年の若い者を指します。

註:
 この種の文字對を作るには、字面と意義とが無関係な語彙を捜すことから始めます。
註:
 「紅女贈詩思君面」の紅の糸偏を外すと、「工女贈詩思君面」と成ります。これは次項要件の丁度逆の事柄となります。

2−

秋色皇都銜落日,春顔紅泪坐空房。 出句と落句を重ねて並べますと 

秋色皇都銜落日,
春顔紅泪坐空房。

 「皇」と「紅」では、色相対に成りません。然し「皇」の字の「王」を取り除きますし「白」に成ります。これなら、紅と対仗となります。

静淵野屋思君貌,
白髪風姿笑我痴。

 対仗の関係を眺めてみますと、出句と落句で不都合があるのは、「静淵」と「白髪」の関係だけである。然し、「静」の「争」の部分を取り除くと「青」と成ります。青と白なら対仗として成り立ちます。

註:
 創作に当たって、どの字を使用するかにはテクニックがある。即ち對仗の関係がハッキリした文字でないと、読者に存在を認識させることが難しい。対仗の条件として、見た目にもハッキリしているのは「色相對」「数字對」「干支對」「方位對」などである。

 然しこれにも条件がある。例えば「白」の場合では、「皐・皓・皎・皙・皀」などの文字は白と類義の文字だから、使用しても違和感を生じさせることが出来ない。それに対し「的・皆・皇・柏」などの文字は、白と類義でないから、違和感があり、使用の目的に適している。

 即ち、字面の文字の意義と、改変した文字との違和感が大きいほど、文字對の使用意義が発揮されます。

参考;字對が重なる聯綿字對がある。

 

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