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王漁洋体

　王士禎の号は漁洋山人である。彼は盛唐王維・孟浩燃の淡静な風格を崇拝し、神韻派を創立し、声調を整わせ情と余韻を最高の詩的芸術とした。康煕年間におけるもっとも著名な詩人であった。然し後期の袁枚が彼の詩について「性情と気迫が表現不足である」と評価し、彼の詩作の視野の狭さが「風に吟じ月を弄ぶ」と言うような、内容の空洞化を招いたと指摘している。此は、客観的な評価で有ると考えられる。

　王士禎（1634年崇禎7年〜- 1711年康熙50年）は中国清朝初期の詩人。山東省新城県の人。字は貽上、号は阮亭、また漁洋山人とも。謚は文簡。本来は士�モﾌ名であったが、死後、雍正帝が即位するとその諱「胤�メvを避けて「士正」と改名される。のち、乾隆帝の治世に「士禎」の名を賜った。号を以て「王漁洋」と称されることも多い。

　1658年（順治15年）25歳にして進士に挙げられ、揚州司理から侍読に進み、刑部尚書（法務大臣）に至った。文人としても頭角を現わし、24歳のとき山東省済南において土地の読書人らとともに「秋柳詩社」を結成、その折詠んだ「秋柳」詩は全国的に賛美者を生むに至り、以後、ほぼ同時代を生きた朱彝尊とともに南朱北王と併称された。1704年（康熙43年）部下の疑獄事件に連座して官を辞め、のちに天子の恩赦によって再度官途についたが、ほどなく卒した。享年七十八。

　士禎の詩は神韻を旨とし、後世清朝の詩壇に影響を及ぼした神韻説の首唱者と目される。当初銭謙益と交流を深めたが、その影響のもとに新しい詩風を打ち立てたものである。この神韻説とは、平静・沖淡・清遠を理想とし、文字面には直接現れない情味を行間に醸し出すのを目的とする。唐の司空図の『二十四詩品』、また宋の厳羽の『滄浪詩話』に見られる詩論の継承を目指し、詩禅一致の説に基づいて、自然と一体化した境地に生まれる余韻を貴び、婉曲でしかも垢抜けた表現のなかに奥深い滋味を求めようとする。

　神韻それ自体は空虚で、捕捉し難く、譬えて言えば「水中に月を掬（すく）い、鏡中に花を探るが如き」ものとされる。ために士�モｪ愛好する詩人は、王維・孟浩然・高適ら、枯淡の境地を描き出す者たちである。彼が神韻の二字を用いたのは、揚州在住の折、その子息のために歴代の五七言の絶句・律詩を選び、『神韻集』と名づけ家塾において学ばせたことに始まると言われる。神韻説は、沈徳潜の主導した「格調説」、袁枚を領袖とする「性霊説」と並び、当時の詩壇に鼎立する詩説の一角を形成していたものであった。

　　秦中凱歌
天上黄河萬里來，巨霊高掌抱雲臺。
遙看丞相行営過，日射潼関四扇開。

　　悼亡詩
薬爐経巻送生涯，禅榻春風両鬢華。
一語寄君君聴取，不教児女衣蘆花。

　　曹正子邀同家兄子側及諸君豊臺看芍薬晩過租氏園亭。三首。
依然春草樊川路，竝馬來過覆盍門。
記得城南天尺五，緑蕪紅薬水辺村。

　　為尤展成悼亡
三年明月鑒虚惟，那更吟君惆悵詩。
不分阿灰断腸句，黄昏微雨畫簾垂。

　　為愚山侍題藕漁畫
山気化雲雲作煙，幽人簑笠不知年。
清渓曲逐楓林転，紅葉無風落満船。

　　供養某君帰呉門索詩
一片青山短簿祠，夕陽花塢帯茅茨。
帰心便逐江鴻去，已過橙黄橘緑時。

　　再送念東
籠水群山繞郭明，杖黎随処有泉声。
名藍金碧和煙雨，小李将軍畫不成。

　　金陵道上
乍疎乍密秧針雨，時去時來舶舫風。
五月行人秣陵去，一江風雨昼濛濛。

　　花朝道中有感寄陳其年
風俗淮南古禁煙，紅橋解禊雨晴天。
酒徒散尽楊枝別，説著花朝一惘然。

　　胡元潤畫
白波青嶂非人境，憶住江南過五年。
今日長征老鞍馬，菰蒲春雨夢江天。

　　趙北口見秋柳感成
六載隋塘送客驂，樹猶如此我何堪。
鎖魂橋上重相見，一樹依依似漢南。

　　宗梅岑畫紅橋小景見寄賦懐
紅橋秋柳最多情，露葉煙條遠恨生。
好在東原旧居士，雨窗著意畫蕪城。

　　竹枝送氷修
北人不識竹枝歌，沙磧春深収駱駝。
南人苦憶江南好，明鏡夾城春始波。

　　再為曰緝題江村図
西臺御史馬歩工，下直垂簾送飛鴻。
高堂雪霽展畫図，興在春江煙靄中。

　　題尤展成新樂符。
南苑西風御水流，殿前無復按梁州。
飄零法曲人間遍，誰付当年菊部頭。

　　題尤展成新樂符。
千金七首土花斑，児女恩讐事等�閨B
他日與君論剣術，要離塚畔買青山。

　　雨中度故関
危桟飛流萬仞山，戍楼遙指暮雲間。
西風忽送瀟瀟雨，満路槐花出故関。

　　驪山懐古
鸚鵡何処問上皇，野棠風折繚垣長。
鎖魂此日朝元閣，親試華清第二湯。

　　馬嵬懐古
巴山夜雨却帰秦，金粟堆邊草不春。
一種傾城好顔色，茂陵終傍李夫人。

　　廣元舟中聞棹歌
江上渝歌幾處聞，孤舟日暮雨紛紛。
歌声漸過烏奴去，九十九峰多白雲。

　　麻姑洞
神仙官府事紛然，懶漫誰能更学仙。
但乞麻姑爬背癢，餘杭兌酒此中眠。

　　襄陽口号
豈有酖人羊叔子，更無悔過竇連波。
残碑堕涙廻文錦，一種鎖沈可奈何。

　　西堂甘橘初熟招東癡
昨宵霜信熟黄甘，小閣離離夕照酣。
為報故人須過飲，挂帆何必洞庭南？

　　荊山口待渡
西連豊沛走中原，風色蕭蕭野渡昏。
一望孤城天接水，乱山合沓是彭門。

　　自錦繍峰下至東林寺
江州郭外雪雲濃，翆壁丹崖錦繍重。
行尽清渓三百曲，東林纔打午時鐘。

　　廣州竹枝
海珠石上柳陰濃，隊隊龍舟出浪中。
一抹斜陽照金碧，齋将孔翆作船篷。

　　題沈客子林屋幽居図
五月揚梅血色斑，雲林十里畫図間。
杉皮屋子青苔径，獨占呉王鎖夏湾。

　　答鐘聖輿送芍薬
新緑横窗穏昼眠，一簾微雨似軽煙。
午晴睡起維摩榻，花気薫人又破禅。

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