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五言絶句TopPage

 五言絶句と謂うと、日本では平韻の格律詩を指すが、五言絶句には平韻の五言絶句と仄韵の五言絶句の二種類がある。

 起句とは、書き出しの句である。前提のないところから書き出す。序文が有る場合は、序文に沿って書き出す。

 承句は、起句の末尾を基点として書き出す。

 轉句は、起句並びに承句とは別個な處を基点として、句を起こす。然し如何に別個な基点とは謂っても、起句承句に収束可能な範囲で無ければならない。

 合句を日本では結句と謂い、起承轉句の締めくくりの句・結論の句とされているが、この定義は誤りである。
 合句とは、結論を導き出すための句である。読者が結論に到達できるように誘導する為の句で、決して結論を述べては成らない。

律絶(平韻)

五言絶句正格(仄起式)
▲ ● △ ○ ●, 起句    
△ ○ ▲ ● ◎。 承句  (平韻)
△ ○ ○ ● ●, 転句    
▲ ● ● ○ ◎。 合句  (平韻)

定型はこちらで参照してください。

 ようやっと四句揃った定型に辿り着きました。ここで起承転合をどのように配置するかを講じましょう。
 だれにもできる漢詩の作り方を手元に講を進めます。Pはテキストのページです。

▲● △○●, 起句
 出だしの句ですから簡単に入り易くしましょう。
一夕 青燈下,   P77
ある晩、電気スタンドの下で、

△○ ▲●◎。 承句  (平韻)
 出だしの句に続けて、一寸視点を変える。
傷時 懐舊歓。   P77  寒韵
時の過ぎゆく様に心を傷め、昔の嬉しかったことを懐かしむ。
註:この場合同席しているのか、或いは手紙を読んで居るのか、或いは頭の中だけなのかは、不限定です。
注;「傷時」は情を言っているようですが、これは、作者の情ではありません。

△○ ○●●, 転句
 起承句とは視点を変えて綴ります。
西風 身作客,   P77
季節は秋、私は故郷を離れて他郷にいます。
註:秋とは、実りを指しますが、頂点であると同時に、下降の始まりをも指します。
  客とは、故郷を離れてひとりぼっちで居る事を指します。家族と離れて居ることも客と謂います。親兄弟と離れ独りぼっち、或いは単身赴任で妻子と別れ別れに暮らすことを謂います。
注;「西風」これは客観的な記述ですが、作者の情を言っています。

▲● ●○◎。 合句  (平韻)
 起承句と転句を合わせる句です。合わせますが結論ではありません。結論は読者に委せて、読者が結論にたどり着ける様に案内をします。
買酔 嘆衣単。   P77
 酔って衣の単衣なのを嘆くとは、恐らく単身赴任であろう。そろそろ夜は寒くなってきた。早く長袖シャツを送ってくれ!

 此処まで詠み進むと、全体の様子が現れてきた。単身赴任のお父さん、チビリチビリとやりながら、家族のことでも思っているのだろう。もう定年も近いというのに単身赴任、このごろ夜は寒くなってきた。冬物を送ってくれ!

 此処で肝心なことは、作者は自分の感想は書いていません。書かなくとも読者が自分と同じように思ってくれれば良いのです。亦その様に誘導するのが詩作の技量なのです。

寒窗獨酌
一夕青燈下,相思懐舊歓。
西風身作客,買酔嘆衣単。

 

▲● △○●, 起句
燕子 簾前影,               P53
 燕が古巣に帰ってきました。自分が忘れられていない事を言っています。
 この句は、目に見える物を詠っていますから、
実句と謂います。

△○ ▲●◎。 承句 (平韻)
檐頭 花作塵。 眞韵        P53
 軒端で花は塵となります。自分の身近では、時勢が移っている事を言っています。
 この句は、目に見える物を詠っていますから、
実句と謂います。

△○ ○●●, 転句
已知 芳草暗,                 P53
 既に春の次に来るもの、新しい世代が育っています。
 この句は、目に見えない物を詠っていますから、
虚句と謂います。

▲● ●○◎。 合句 (平韻)
微雨 餞徂春。 眞韵        P53
 小糠雨が過ぎゆく春を餞しています。
 この句は、目に見える物を詠っていますから、
実句と謂います。

 四句を合わせると、どういう内容になりますか?

註:この作品の句の配置は実実虚実です。虚実虚実の配置にすると比較的作りやすく躍動的に作る事が出来ます。

晩春閑居
燕子 簾前影,檐頭 花作塵。
已知 芳草暗,微雨 餞徂春。


▲● △○●,
養拙 安吾分    虚句   P103

△○ ▲●◎。
栽花 数畝田。   実句     P103

△○ ○●●,
何求 風月興,   虚句      P103

▲● ●○◎。
筆硯 染華箋。   実句      P103

閑居
養拙安吾分,栽花数畝田。
何求風月興,筆硯染華箋。

 こんな具合に、後は沢山作ることだ。

 より高度な作り方を数例示そう。

散體
緑暗苔痕湿,池頭燕子飛。
単身千里別,閉戸染吟衣。

全對
客裏幾欹耳,閑階獨煮茶。
託詩懐往事,執筆惜残花。

野店春猶浅,探梅酔暫留。
學窗詩亦拙,破蕾竝相扶。(章の對)

前對
柿熟秋郊路,朋思菊花香。
何堪家信絶,誰謂是吾郷。

後對
一夜梧桐雨,耽詩笑我愚。
残陽知節序,終日問蓬壷。

 

五言絶句側体仄起式(仄韻押韻)
炬燭照花枝,酔人村店裏。 (仄韵)(上聲紙韵)
思君萬里情,執筆詩酒恥。 (仄韵)

注:五言絶句や五言律詩の第一句は押韻しないものが多い。日本のテキストには、押韻しない事が正格で有るかのように書かれているが、本来押韻するかしないかの規定はない。「押韻しない作品が多い」と理解すべきである。

 

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