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 「だんすがすんだ」「たけやぶやけた」これらの句は上から詠んでも下から読んでも同じに読める。これと同じ事を漢詩でやろうとするのが「回文詩」である。めくら滅法に試みても埒が開かぬので、先ずどの様な文字配置にしたらよいかを考究してみよう。

 七言絶句を例に取ると
七言絶句平起式
○○●●●○◎,●●○○●●◎。●●○○○●●,○○●●●○◎。

これをひっくり返すと
◎○●●●○○,●●○○△●●。◎●▲○○●●,◎○●●●○○。

両方の条件を満たすには
◎○●●●○◎,●●○○▲●◎。◎●△○○●●,◎○●●●○◎。

これの文字構成は
◎○●●●○◎,
ABCDCBA
とすればどちらから読んでも読めるようになる。

 同様の方法で五言絶句は、
◎●○○●,○○●●◎。◎○●○●,●○●○◎。
の如くなり、一方は仄起こり、一方は平起こりと成る。

 文字の配置を次のようにして、作例を試みる。ABとBAは、どちらからでも読める語彙を選ばなければ成らない。

◎●○○●,○○●●◎。◎○●○●,●○●○◎。
ABCBA,ABCBA。ABCBA,ABCBA。

七言絶句の場合は
◎○●●●○◎,●●○○▲●◎。◎●△○○●●,◎○●●●○◎。
ABCDCBA ABCDCBA ABCDCBA ABCDCBA


新緑試筆 五言絶句 順讀
躬老春園寂,幽窗與舊居。風塵抛筆硯,宿志題未詩。

新緑試筆      倒讀
詩未題志宿,硯筆抛塵風。居舊與窗幽,寂園春老躬。




新春憶家郷 七言絶句 順讀
傷春爲詞恨堪憐,桟古横淵野架煙。章有痕涙空看我,郷家惜惜莫經年。

           倒讀
年經莫惜惜家郷,我看空涙痕有章。煙架野淵横古桟,憐堪恨詞爲春傷。




廬山途上之作 七言律詩 順讀
懐留筆達苦無踪,廟塔晴嵐緑樹叢。堆起雲峯雲靉靉,接來霧澗霧濛濛。
衣沾草露才花白,杖曳泉飛已葉紅。誰寄袋嚢詩骨健?危岩磴桟徑重重。

            倒讀
重重徑桟磴岩危,健骨詩嚢袋寄誰?紅葉已飛泉曳杖,白花才露草沾衣。
濛濛霧澗霧来接,靉靉雲峯雲起堆。叢樹緑嵐晴塔廟,踪無苦達筆留懐。


長江游草 五言排律 順讀
人駭渓聲烈 青青露滴枝。神威萬山勝,連岳壑巌欹。
塵俗千邑旅,遊程雨道危。眞情史紀筆,夢裏覇題詩。
頻唱高心素,潭前月映碑。

倒讀
碑映月前潭,素心高唱頻。詩題覇裏夢,筆紀史情眞。
危道雨程遊,旅邑千俗塵。欹巖壑岳連,勝山萬威神。
枝滴露青青,烈聲渓駭人。


◎●○○●,○○●●◎。
人駭渓聲烈 青青露滴枝

◎○●○●,○●●○◎。
神威萬山勝,連岳壑巌欹

◎●○○●,○○●●◎。
塵俗千邑旅,遊程雨道危

◎○●○●,●●●○◎。
眞情史紀筆,夢裏覇題詩

◎●○○●,○○●●◎。
頻唱高心素,潭前月映碑。

 

簡単な作り方

 何をするにも手際よい方法がある。漢詩詞然り、回文詩も然りである。七言絶句を例に取ると平仄の配列は下記の如くとなる。

合句・・・・◎○●●●○◎・・・・起句

転句・・・・●●○○●●◎・・・・承句

承句・・・・◎●○○○●●・・・・転句

起句・・・・◎○●●●○◎・・・・合句

 此をひっくり返すときは、逆から読めばよい。起承轉合は赤字のようになる。起句は逆から読んで合句でもある。同様に、承句は逆から読んで転句でもある。転句は逆から読んで承句でもある。合句は逆から読んで起句でもある。

 起句は逆読み合句でもあるのだから、一つの事柄をスッキリと言い退けるのがよい。合句は逆読みでもあるのだから、一つの事柄をスッキリと言い退けるのがよい。

 承句は逆読み転句でもあり、転句は逆読み承句でもある。承句は起句の後を継ぎ、視点を変えて述べる。転句は承句から離れた視点を捕らえて述べる。この双方に異なった要件を満たすのには、承句は起句の後を継ぐが、切れない程度に出来るだけ視点を変えて述べる。

 転句は、合句の頭を継ぎ、切れない程度に視点を変えて述べる。

 押韻は、順讀の韵だけを踏み、先ず順讀の起承轉合を、前記の要領に従って作る。この時点では未だ逆読みは出来ない。

 倒讀は一句ずつ仕上げて行く。
 起承轉合の配置は、順讀で完成しているので、句意を損ねないように逆から読んでも読めるように文字を組み替えて行く。その時順次頭の韵字を設定して行く。正逆どちらからでも読めれば完成である。

注意点
@ 余りゴタゴタした内容にしないこと。
A 起承轉合の配置は、前記説明のように配置すること。
B 逆読み出来るように文字を組み替えるとき、句の内容が余り変わらないようにする。

 これでどうやら、どちらから読んでも読める回文詩が出来た。でも此ではどちらから読んでも、同じような内容の作品が出来る。今まで述べた方法は練習方法である。テクニックを会得したら本題に進もう。

 回文詩の本義は、只どちらからでも読めるだけではない。裏表で趣旨が異ならなければならない。此が物事の表裏と相まって、回文詩の本領である。

 此を達成させる為の方法は、
@ 実句と虚句の配置を考慮すると、情の所在が主客逆転する。
A 句の頭と尻で主語を換えると、主語が客語になったり、客語が主語になったり、主客逆転する。
 この二点に注意を注ぐと、効果が現れる。

 律詩は、絶句の方法を踏襲すればよい。

 

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